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ある集会にて

 7月25日,高知市の中心部で,安保法制に反対する集会とデモが行われた.このとき沖縄出身の女子学生が演壇に立った.その演説がたいへん良かったので,ここに紹介します.

(ここから)
 私がじいちゃん、ばあちゃんから聞いた沖縄戦の教訓、それは、戦争とは国と国の勝ち負けではないということ、戦争とはただの殺し合い、また一般市民からしてみれば虐殺だということです。兵士の仕事は敵を殺すこと。戦場では、自分が死ぬ覚悟で相手を殺さなければならない。そうでなければ相手に殺られます。とにかく動くものが敵であれば迷わず殺せ、それが兵士だ。兵士は市民を守るようなものじゃないと、おじー、おばーたちは繰り返しいってきました。

 互いの国の兵士がひたすらに殺し合った結果、沖縄では一般市民の4人に一人がその犠牲となりました。

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 なんでそんなことになったのか。それは、沖縄に日本軍が集中していたからです。

 「日本にとって、沖縄は絶対取られるわけにはいかない」。当然ですが、当時そういうことが盛んにいわれていました。しかしそれは、本土への侵略を阻止するためになんとしてでも沖縄で戦闘を食い止めなければいけない、というのが本音でした。だからアメリカの目が本土に向かわないように、沖縄に集中的に配軍したのです。アメリカはもちろんそこをぶっ叩きに行きました。先ほども言ったように兵士の仕事は敵を殺すこと、軍隊のあるところに攻撃が向かうのです。そして、案の定市民は守られなかった。こうして沖縄は戦場になりました。

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 先日衆議院が採決した安全保障関連法案には、集団的自衛権の行使容認が盛り込まれていますね。日本の自衛隊がアメリカ軍と一緒になって、アメリカの戦争に援助・協力する、せざるを得なくなるという法案です。

 ちょっと考えてみてください。例えばアメリカが中東で戦争をする。それに日本が協力する。それは前線ではないかもしれません。しかし、相手にとって敵は敵、アメリカ軍に協力する自衛隊ももちろん敵です。自衛隊も軍隊とみなされ、殺すべき敵として狙われます。

 さらに憎しみの矛先は自衛隊に限られない、それを送り出した私たち日本人すべてが攻撃の対象となります。そうしたらどうなるか。

 おそらくその戦争の補給基地となる、日本の米軍基地や自衛隊の基地が狙われます。殺られる前に殺れ、まずは敵の拠点をつぶせというのは軍事の基本です。もしかしたら、テロの形をとるかもしれない。いずれにしろ、自衛隊はそれを迎え撃つでしょう。しかし、住民が巻き込まれるのは避けられません。そんな事態になれば攻撃してくる方も捨身です。自衛隊に市民を第一に守る余裕などないでしょう。

 軍隊は市民を守らない、そして軍隊のあるところが戦場になる。この法案の成立によって、沖縄の悲劇が繰り返されようとしています。もっとも、それは沖縄だけに限った話ではありません。日本全土の話です。

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 安倍さんは、集団的自衛権は抑止力の強化に必要だといいます。つまり、日米間の軍事的協力関係を強めることによって、周辺諸国が(言わないけど、たぶん中国ですよね)うかつに攻撃できないようにする、と。でも先ほどから言っている通り、軍があるから攻撃されないというのは子供だましです。

 抑止力というのは、攻撃するメリットよりデメリットの方が大きいようにみせる力、効果のことです。いま、どこかの国が日本に攻めてきたとして、それにどのくらいのメリットがあるでしょうか。日本は戦後70年間、非戦の国として各国に受け入れられてきました。しかもそれで先進国としての地位にいる。そんな国に攻め入るなんてリスクが高すぎます。世界中からバッシングを受けるのは目に見えているでしょう。私は、抑止力とは憲法9条だと考えます。いまこそ、9条の抑止力としての価値を私たち自身が自覚すべき時ではないでしょうか。

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 安保法案の成立とともに、憲法を骨抜きにしようと邁進する現政権。少しずつ戦争への道を切り開いていこうとしているのは、もう隠す気もないようにみえます。首相は戦争ぐらいできないと一人前の国家にはなれないとでも思っているのでしょう。そんな前世紀で終わった国家像を持ち出されても、正直戸惑うばかりです。ムリです。

 戦争が儲かるのは事実です。ミサイル一つ落とすだけで莫大なカネが生まれますし、戦争という一つの目標に向かって国民を無我夢中に働かせることもできます。さらに、軍事力を背景に大企業を無理やり海外に進出させることだってできます。でも、その利益が多くの国民のもとに下ることはないでしょう。そんな国で、そんな状況の下で暮らしたいですか?

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 東日本大震災。あのとき、日本が大きなピンチに直面した時に、世界中から応援の声が届き、救いの手が差し伸べられました。あれこそが、日本が平和憲法によって手に入れた大きな成果だと思います。(ここ高知にも地震の心配はあります。近隣諸国と仲良くすることは、減災であるともいえるでしょう。)戦争をしない国とは、敵をつくらない国。戦争をしない国こそが、無敵の国です。たくさんの国から協力を得られると同時に、沢山の国に貢献することができる。いまだかつてそんな国があったかはわかりませんが、それを実現する可能性を、この国は大いに秘めていると思います。

 以上のように、私は安保法案に反対します。今日は、どうもありがとうございました。
(ここまで)

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