BEIR VII
放射線の人体への影響について前回は「晩発性障害」について,沢田氏の解説を紹介した.少し補足したいことがあったけれど,当面まず話を先に進めることにする.
今回はBEIR VII という出版物を参照する.私は「ヤメ蚊」さんのブログ:
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/cbe4e8a185fc7e6f24267888e46121a1
から情報を得て,リンクをたどってBEIR VII にたどり着いた.
BEIR VII は2006年に出された「報告書」である.次のように書いてある:
「この報告書は,放射線の健康への影響に関する米国科学アカデミーの一連の報告,すなわち BEIR (Biological Effects of Ionizing Radiation, 電離放射線の生物学的影響) と呼ばれる報告の第7報である.この報告書,すなわち BEIR VII は,低レベルの,線形エネルギー転移の低い(low levels of low-LET (linear energy transfer))電離放射線,たとえばX-線やガンマ線が,健康におよぼす影響に焦点を置いている」(要約文より).
ちょっと脱線.
いきなり難しい言葉が出て来てしまった.単語を機械的に日本語に置き換えて「線形エネルギー転移」と書いたのはマズかった.線形とは何だ,転移とは何だ,とか色々言わないで,そのままLETという語を使うことにします.
ググってみた結果だけ書きます.放射線にはLETの高いものと低いものがある.低いものとしてはX-線やガンマ線,それに電子線(ベータ線のことかな?)がある.いっぽうLETの高いものとしては中性子線,パイオン,重粒子線がある.
で,「高い」ほうはまた難しい語がでてきたけど無視します.とりあえずの関心事は「低い」ほうですからネ.とにかく BEIR VII には 「たとえばX-線やガンマ線」と書いてある.なぜ「たとえばX-線やガンマ線やベータ線」と書いてないのかも気になるけれど,先に進みます.
「LETが低い」とは,そういう意味です.そういう放射線について,「ほとんどゼロから約100mSvまで」の「低レベル」の線量が,人体にどういう影響を及ぼすか,というのがBEIR VII のテーマである.
前置きが長くなってしまったけれど,結論は1つの表になっている.
10万人が,LETの低い放射線を100mSv被曝したとき,
-------------------------------------------------------------------------------------------
白血病以外のガン 白血病
男 女 男 女
-------------------------------------------------------------------------------------------
(1) その被曝が原因で
発ガンする人数 800 1,300 100 70
(2) それ以外の原因で
発ガンする人数 45,500 36,900 830 590
(3) その被曝が原因で
ガン死する人数 410 610 70 50
(4) それ以外の原因で
ガン死する人数 22,100 17,500 710 530
-------------------------------------------------------------------------------------------
ここから先はBEIR VII を少し離れて,勝手に「考察」する.
この表によれば,白血病以外のガンについては,女性のほうが放射線の影響を強く受ける.そのほか発ガンやガン死の確率に性差があるけれど,あっさり男女の人数を足して2で割ったら見やすくなる.
白血病以外のガン 白血病
(1) 1,050 85
(2) 41,200 710
(3) 510 60
(4) 19,800 620
「白血病以外のガン」について言うならば,100人が被曝したとき42人がガンにかかる.被曝がなかった場合は41人がガンにかかる.差し引き1人ぶんが,「放射線被曝によって発ガンした」人数ということになる.単純に言ってしまえば,「放射線被曝による発ガン率は1%」ということだ.
で,この表は100mSvを被曝した場合の人数である.ということは,たとえば10mSvを被曝した場合の発ガン率は0.1%となる.つまり千人に1人である.うち半分が死ぬ.いま福島の学校で問題となっている基準値である年間20mSvというのは,1年間そこにいたら千人に2人がガンになり,うち1人が死ぬ,という数値だということになる.
話はもう少し続きます.今回はここまで.
今回はBEIR VII という出版物を参照する.私は「ヤメ蚊」さんのブログ:
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/cbe4e8a185fc7e6f24267888e46121a1
から情報を得て,リンクをたどってBEIR VII にたどり着いた.
BEIR VII は2006年に出された「報告書」である.次のように書いてある:
「この報告書は,放射線の健康への影響に関する米国科学アカデミーの一連の報告,すなわち BEIR (Biological Effects of Ionizing Radiation, 電離放射線の生物学的影響) と呼ばれる報告の第7報である.この報告書,すなわち BEIR VII は,低レベルの,線形エネルギー転移の低い(low levels of low-LET (linear energy transfer))電離放射線,たとえばX-線やガンマ線が,健康におよぼす影響に焦点を置いている」(要約文より).
ちょっと脱線.
いきなり難しい言葉が出て来てしまった.単語を機械的に日本語に置き換えて「線形エネルギー転移」と書いたのはマズかった.線形とは何だ,転移とは何だ,とか色々言わないで,そのままLETという語を使うことにします.
ググってみた結果だけ書きます.放射線にはLETの高いものと低いものがある.低いものとしてはX-線やガンマ線,それに電子線(ベータ線のことかな?)がある.いっぽうLETの高いものとしては中性子線,パイオン,重粒子線がある.
で,「高い」ほうはまた難しい語がでてきたけど無視します.とりあえずの関心事は「低い」ほうですからネ.とにかく BEIR VII には 「たとえばX-線やガンマ線」と書いてある.なぜ「たとえばX-線やガンマ線やベータ線」と書いてないのかも気になるけれど,先に進みます.
「LETが低い」とは,そういう意味です.そういう放射線について,「ほとんどゼロから約100mSvまで」の「低レベル」の線量が,人体にどういう影響を及ぼすか,というのがBEIR VII のテーマである.
前置きが長くなってしまったけれど,結論は1つの表になっている.
10万人が,LETの低い放射線を100mSv被曝したとき,
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白血病以外のガン 白血病
男 女 男 女
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(1) その被曝が原因で
発ガンする人数 800 1,300 100 70
(2) それ以外の原因で
発ガンする人数 45,500 36,900 830 590
(3) その被曝が原因で
ガン死する人数 410 610 70 50
(4) それ以外の原因で
ガン死する人数 22,100 17,500 710 530
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ここから先はBEIR VII を少し離れて,勝手に「考察」する.
この表によれば,白血病以外のガンについては,女性のほうが放射線の影響を強く受ける.そのほか発ガンやガン死の確率に性差があるけれど,あっさり男女の人数を足して2で割ったら見やすくなる.
白血病以外のガン 白血病
(1) 1,050 85
(2) 41,200 710
(3) 510 60
(4) 19,800 620
「白血病以外のガン」について言うならば,100人が被曝したとき42人がガンにかかる.被曝がなかった場合は41人がガンにかかる.差し引き1人ぶんが,「放射線被曝によって発ガンした」人数ということになる.単純に言ってしまえば,「放射線被曝による発ガン率は1%」ということだ.
で,この表は100mSvを被曝した場合の人数である.ということは,たとえば10mSvを被曝した場合の発ガン率は0.1%となる.つまり千人に1人である.うち半分が死ぬ.いま福島の学校で問題となっている基準値である年間20mSvというのは,1年間そこにいたら千人に2人がガンになり,うち1人が死ぬ,という数値だということになる.
話はもう少し続きます.今回はここまで.
2011-05-12 18:18
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shira様,nice!をありがとうございます.
by Ladybird (2011-05-13 17:15)
ayu15様,nice!をありがとうございます.
by Ladybird (2011-05-23 20:47)