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笛吹き再訪

 今日は雑談です(タイトル変更).

 笹の花は滅多に見られない.しかし開花するときは広範囲の,時には山全体の笹が,一斉に開花する.おそらく地下茎でつながっているのだろう.私は笹の花を何度か見たことがある.最も記憶に残っているのは高知県と徳島県の県境にある三嶺(さんれい)という山での体験で,もうずいぶん以前の話になってしまった.

 開花にひき続いて起こるのが結実だ.笹の実とはどういうものか憶えていないけれど,想像するに,稲のできそこないのような形状ではないだろうか.栽培種の稲のようなリッチな稲穂ではなくて,穂軸のまわりに種子がパラパラとまばらに付いているようなものだろう.

 それにしても笹が稲のような種子を結実させる.そして黄金色の稲穂は古来,日本人にとっては宝物である.めったに見られない笹の開花と結実.それが山全体を巻き込むような規模で起きたとしたら,山麓の村ではさぞ話題になっただろう.歌にも歌われたかもしれない.たとえばこういう歌だ.

会津磐梯山は宝の山よ
笹に黄金が成り下がる

 笹の大量結実にひき続いて起こることと言えば,ネズミの大発生だ.突如として出現した豊富な食料を基礎に,山のネズミが個体数を急激に増加させる.そして集団で移動を始める.ネズミの群れは山麓の村を襲い,農作物を食い荒らす.最悪の場合これは飢饉の原因となる.

 ここで話はしこたま飛躍する.
 ネズミの大量発生といえば,すぐ連想するのは「ハメルンの笛吹き」である.ネズミの大発生に苦しむ中世ドイツの町ハメルンに1人の男が出現.笛を吹いてネズミを退治した,という物語だ.これが物語の前半.

 後半も面白い.やっとネズミがいなくなって人々は笛吹き男に感謝せねばならないはず.ところが市長は謝礼金を払わなかった.怒った男は再び街角に立って笛を吹く.すると今度は町の子供たちが集まって,男について行く.そして山の洞窟?に消えてしまう.

 福島県はいま苦しんでいる.磐梯山に笹の花が咲いたからではない.「夢のエネルギー」とうたわれた原発が事故を起こし,今なお放射能をまき散らしているからだ.東京電力や政府やNHKは,国民の目をこの現状から逸(そ)らさせようと躍起になっている.しかし現実に汚染は継続している.隠蔽や嘘はいずれ発覚し,大きな問題となるだろう.もちろんその頃には,現在の責任者や担当者は退職して,悠々自適の年金生活を送っていることだろう.このみごとな無責任体制の存在に,人々は早く気付かねばならない.

 ハメルンの笛吹き.物語のおまけは不思議な後日談だ.連れ去られた子供たちは,じつは遠隔地に集団移転していたらしい.
http://blog.livedoor.jp/uradowan/archives/2011-05.html

 今でも福島県は笛吹きを必要としている.子供たちを汚染地から連れ去って集団疎開させること.そういう笛を吹いてくれる人を,である.

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