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二項分布

 東京都知事選の歴代の当選者は,東京23区の各区において,それぞれの区の有権者数にほぼ比例する得票を得ていることを見てきた.今回は「2項分布の当てはめ」という観点から考えてみる.なお,前回までの分析も含め,すべて私の自己流であることをお断りしておく.
“有権者と舛添 二項分布H26 のコピー.xls”のプレビュー.jpg
 具体例から始めよう.右表は平成26年の各区の有権者数nと当選者(舛添氏)の得票xを示している.nとxが完全に比例しているなら,比 x/n は一定となる.この点を検討するため,23区全体の舛添氏の総得票数を,23区全体の有権者総数で除算した値p を求める.つまり,
p = (xの総和) / (nの総和)
である.総和とは23個の値をすべて足し合わせたという意味.この例ではp = 0.1981となった.つまり舛添氏は23区有権者数の19.8%の票を得ている.
(表はクリックすると拡大表示されます)

 もし舛添氏の支持者が均等に分布しているなら,つまり支持者の比率が多い区と少ない区がなくて,どの区でも同じように得票すると仮定すれば,ある都民が舛添氏に投票する確率は(23区のどこにおいても) p = 0.1981 となる.舛添氏に投票しない(別の人に投票する,または棄権する)確率1-p は 0.8019だ.これをqとする.
q = 1-p

 これは「二項分部」の話になる.大きな袋に赤い玉と白い玉が入っている.袋に手を突っ込んで玉を1つ取り出す.それが赤い玉である確率をp,白い玉である確率をqとする.同じ操作をn回くりかえしたとき,赤い玉にx回当たる確率は? これが二項分布.

 二項分布の平均値はnpで,分散はnpqだ.そして標準偏差(分散の平方根)はrt(npq)となる.「平方根をとる」という操作を,ワープロでは「平方根」の記号が書けないのでrt( ) と書いてみました.ここだけの用法です.

 とりあえず実行したい作業は y = (x-np)/rt(npq) を計算すること.上表を左から右に1列ずつ追っていけば,計算のプロセスがわかると思う.まず有権者数nと舛添氏の得票xの「区部計」より,pとqの値を得る.あとは有権者数とpの積npを計算.さらにqを掛けてnpq,その平方根rt(npq) 等々.なお表の数値は小数点以下を書いてないので,計算がきっちり合わないのは四捨五入のせいです.

 おおざっぱに言って,変数xが二項分布に従うとき,xから平均値を引いて,標準偏差で割った値,
y = (x-np) / rt(npq)
は,標準正規分布(平均値0で標準偏差1の正規分布)に従うはずだ.しかし計算されたyの数値(表の右端のコラム)を見れば,全く従ってないことがわかる.正の値と負の値があるが,いずれにせよ絶対値が大きすぎる.

 正規分布では,変数が平均値から標準偏差の2倍以上離れた値をとる確率は約5%だ.「標準偏差の2倍」つまり「2シグマ」は,確率5%の限界値を見る簡便法だ(シグマとは標準偏差のこと).
 標準正規分布なら平均値0,標準偏差1だから,yが2より大きい,または-2より小さい値となる確率は5%.上の表のように37とか,-23などという値はあり得ない.だから舛添氏の得票率は,どの区も同じとは言えない.

“Yの値.xls”のプレビュー.jpg

 右表は,歴代の当選者について,yの値を示している.舛添,猪瀬,石原氏の得票が多いのは江東区,墨田区,北区,文京区など.得票が少ないのは杉並区,中野区,渋谷区あたりだろうか.

 年次を追ってみると,石原氏の得票パターンが,H11(平成11年)とH15の間で大きく変わっている.特に江東区は,H11では石原票が少なかったのに,H15では激増している.逆に世田谷区や杉並区ではH11では石原票が多かったのに,H15以降では少ない.

得票数 vs 有権者数

 2回の選挙での得票数の比率,という切り口は重要である.しかし複数回の立候補をした人で,かつ一定以上の得票をしている人となると,例数が限られてしまう.そこで各候補者の得票のパターンを比べるために,得票数と有権者数の比率をとってみる.
“h26宇都宮.xls”のプレビュー.jpg
 つまり前回の記事「比率が一定であるということ」で説明した計算方法を,そのまま採用する.ただし今回は「得票数/得票数」ではなく,「得票数/有権者数」の比率を出発点とする.

 具体的に説明しよう.右の表は平成26年の都知事選での宇都宮氏の得票(x)を示している.
(表はクリックすると拡大表示されます).
 得票数(x)を,この時の有権者数(y)で徐算して100を乗ずる.つまり「有権者数の何%の得票」という数値(z)を,23区すべてについて算出する.これが「得票数/有権者数」の比率(の100倍)である.前回の記事で「得票数/得票数」の比率となっていたところ(コラムA)に相当する.

 あとは前回と同じです.コラムAの平均mを計算する.この例ではm = 8.961となった.次にコラムAの数値を m で徐算する.これがコラムBの数値.
 この数値の平均は1に近い値となるはずだ.そしてコラムBの分散(B分散,
この例では 0.01867)を,同じように計算した他の候補の分散と比べることができる.

“有権者数を分母.xls”のプレビュー.jpg
 このように計算したB分散の値を比較したのが右表だ.H26では舛添氏のB分散が最も小さく,他候補のB分散を舛添氏のそれで徐算した「分散比」は,いずれも1%の限界値2.78より大きい.つまり舛添氏の区ごとの得票は,それぞれの区の有権者数と比例していて,その度合いは他候補よりはるかに顕著である.

 なおA平均の値は,その候補が有権者数の何%の票を獲得したかという数値を概略表わしているので,参考にしてください.

 H24も当選者(猪瀬氏)のB分散が最小となっている.これを分母として分散比をとると,猪瀬氏の分散の小ささが際立っている.

 H23でも,B分散は当選者(石原氏)が最小である.しかし分散比の値が示すように,この時は渡辺氏や東国原氏も,得票数が有権者数とよく比例していて,石原氏のB分散と「有意な」違いはない(違いがない数値に*印を付けてある).以下,H15の中松氏,H11の舛添氏や三上氏も,区ごとの得票が有権者数とよく比例している.これらの人は効率よく票数をかせぐ秘法を持っているのかもしれない.

 最後に,多少強引ではあるけれど,今回の数値(得票数/有権者数)を前回の「得票数/得票数」の数値と比べてみよう.2つずつ並べてみる.上が今回の,下が前回のB分散である.

H26舛添/H26有権者数  0.00371
H26舛添/H24猪瀬    0.00112

H24猪瀬/H24有権者数  0.00172
H24猪瀬/H23石原    0.00081

H23石原/H23有権者数  0.00406
H23石原/H19石原    0.00163

H19石原/H19有権者数  0.00435
H19石原/H15石原    0.00339

H15石原/H15有権者数  0.00621
H15石原/H11石原    0.01999

 H19以後は当選者の得票数は,有権者数よりも前回の選挙結果と,より強く関係づけられる.しかしH15石原の得票数は,有権者数との関係のほうが,前回の得票数との関係よりも顕著である.この選挙で石原氏は前回の1.9倍の得票数を得ていて,こういう場合は前回の比率が維持されにくいのかもしれない.

比率が一定であるということ

 今年(平成26年)の東京都知事選で当選した舛添氏の得票数が,東京23区のどこにおいても,平成24年に当選した猪瀬氏の得票数の48%であったことから,そういう規則性がなぜ起こったのかを調べている.都知事選の過去データを,もう少しいじってみよう.
 5月8日の記事で「散らばりの小ささ」について書いた.得票の比率が,どの区においても0.48程度であったということは,比率は区ごとにあまり違わない,つまり変動が小さいということだ.そこで比率の数値の「分散」を比べたのが5月8日の記事だ.
 そのとき問題になったのは,比率の数値が大きくなると分散の数値も大きくなること.この点に対処するため,今回は比率の数値を平均値で割り算してから比較する.
舛添-猪瀬の場合.jpg
 具体的に説明しよう.右の表は平成26年の選挙での舛添氏の獲得票数(H26舛添)をH24猪瀬で徐算した数値である(コラムA).この数値の23区の平均値は0.486,分散は0.00026となる.
(表はクリックすると大きく表示されます).

 この分散の値を他の事例と比べたいのだけれど,それは平均値が同程度の事例としか比較できない.そこで今回は,コラムAの各数値を,平均値0.486で徐算した(コラムB).そうすると,コラムBの数値の平均は1に近い数値となる.そして分散の値(この例では0.00112)を,同じように計算した他の事例と比較することが可能となる.

 計算結果を下の表に示してある.当選者である石原氏-猪瀬氏-舛添氏の系列のほか,2回以上立候補した人の得票比を,比較のため示した.ただし,あまりに得票数の低い候補はハズした.

 上記のように計算した分散(B分散)の値を比べて頂ければよい.またB分散の値を H26舛添/H24猪瀬 のB分散値で徐算した「分散比」も示してある(注).分散比の目安としては,2.04なら確率5%,2.78なら確率1%である.たとえば H19石原/H15石原 は3.03で,1%の限界値2.78より大きい.つまりH26舛添/H24猪瀬 に比べ,23区の間での変動は極めて大きい.統計学的に「有意な」違いがある.

(注)23個の数値から分散を計算したので,分散比は第1自由度22,第2自由度22のF分布に従う.だからエクセルの関数FDISTを使って,分散比の値から確率を計算できる.


得票比の分散比.jpg

 なおA平均の値は,2回の選挙での得票数の比を概略表わしている.H15石原はH11石原の1.9倍,H24中松はH23中松の2.7倍もの得票をしていて,どちらの例でもB分散が大きくなっている.一方,H24猪瀬はH23石原の1.6倍の得票をしているのに,B分散は極めて小さい.

 得票数の大きな変動にもかかわらず,石原-猪瀬-舛添の系列では,23区間の得票比率は極めて変動が小さく,一定比率のまま維持されているという現象は,どのように説明できるのだろうか?

低い投票率

 数字ばかりいじって眼がかすんできたので,今回はちょっと一休みしよう.

 下の表は平成11年以降の都知事選について,東京23区の有権者数,投票者数,および当選者の得票数の推移を示している.有権者数が順調にゆるやかな増加を示しているのに対し,投票者数は大きく変動している.特に平成26年の投票者数は,いかにも低い.この選挙では16人もの立候補者があった.過去の事例では平成19年の14人,平成11年の19人など,立候補者が多かった選挙では,投票者数もそれなりに多い.平成26年の選挙では細川氏の立候補など話題も多く,なぜ投票率がこれほど低かったのか理解できない.何が原因で,これほど低い投票率になったのだろうか.

“票数の推移 グラフ.xls”のプレビュー.jpg
 図はクリックすると拡大表示されます.

 東京都知事選も含め最近はいろいろと「不正選挙」の噂が絶えない.「不正選挙」でネット検索すると,いろいろなブログやYouTube がヒットする.たとえば,
http://kaleido11.blog.fc2.com/?no=1757
は,衆議院選挙で「未来」に入ったはずの1000万票が消えてしまったと主張している.また,何の選挙のことだったのか忘れたけれど,投票所には長蛇の列ができていたのに,発表された投票率は異常に低かった,という指摘をする人もいる.

 選挙の結果に疑問を持ち,投票所の出口調査をした人たちもいる.参院選での出口調査の結果が,実際の選挙結果とあまりに違っていたという指摘もある.
http://blog.livedoor.jp/fuseikanshi/

 2012年の衆院選では,出口調査では自民党が苦境だ,と同党の三原じゅん子議員のブログが伝えている.ところが結果は....
http://richardkoshimizu.at.webry.info/201212/article_198.html


 私は陰謀論は嫌いだ.ましてユダヤとか在日なんとかが日本を操っている的な議論には全くついて行けない.しかし「不正選挙を主張するのは陰謀論だ」と断定して実情を調べもしないというのは,もっとダメでしょう. 事の大きさを考えて欲しい.公平であるべき投票の結果が,もし「操作」されていたとしたら...?

 この国の進路を決めるのは国民の投票である.これほど重要な意思決定が「操作」されるなどということは,その可能性すら微塵もあってはならないことだ.ところが現状はそうでない.上記の出口調査をした人たちに対して現場で選挙を管理していた人たちは,警察に通報してこの人たちを排除しようとしたらしい.こういう姿勢では,選挙が正しく行われてないのではという疑いは膨らむばかりだ.今の政府,役人,マスコミ,その他の現状を見れば,まさか不正はないでしょうなどと言える状況ではない.

 選挙の現状を調査し,とことん検証することが必要だ.そして票数の操作などの不正が起こらないような選挙制度に作り変えて行かねばならない.

比例関係

 東京都知事選挙で,東京23区のどの区においても,平成26年の舛添氏の得票数が,平成24年の猪瀬氏の得票数の48%である,という不思議な現象を調べている.

 これらの候補の得票数は,それぞれの区の有権者数とみごとに比例している.この点が他の候補と違っている.元データは東京都選挙管理委員会のホームページにある.下左の図は平成26年の都知事選の結果で,横軸に各区の有権者数を,縦軸にその候補者の各区での得票数をとったグラフ(散布図)である.候補者が16人もいた乱立選挙だったけれど,投票率は極めて低かった.このグラフには4人の候補者の得票だけが図示されている.どの候補の得票数も,有権者数と多少とも比例している.しかし舛添氏の得票は,この比例の度合いが際立っている.

 図はクリックすると拡大します.
H26グラフ.jpg

 また右側のグラフは横軸に有権者数ではなく投票者数をとっている.やはり舛添氏の得票は直線上に乗っているけれども,その度合いは有権者数の場合ほどではない.その他いろいろな事が,このグラフから示唆される.


 次のグラフは平成11年の都知事選の結果である.この時の当選者は石原氏.やはり当選者の得票数は,かなり直線に乗っている.しかし横軸に有権者数をとるよりも,投票者数をとった方が,より直線に近いようにも見える.

H11グラフ.jpg

 東京都知事選は平成11年,15年,19年,23年,24年,26年に行われた.うち始めの4回は石原氏が,平成24年は猪瀬氏が,そして26年は舛添氏が当選した.平成11年より前の選挙結果は,都選管のホームページには出ていない.さしあたりデータの利用できる上記計6回の選挙結果を,図と同じようなグラフにすると,次の2点が示唆される.

1.どの選挙でも,最高得票者(つまり当選者)は,得票数がみごとに直線に乗っている.
2.平成23年以降の3回の選挙では,当選者の得票と有権者数との直線関係は,投票者数との直線関係よりも,より顕著である.


 グラフを見ての判断だから,客観性に欠けるという批判も成り立つ.だから,上記の2点は,本当はきっちり計算して「証明」する必要があるが,今回はグラフの提示に留めておく.とにかく上記1の直線性,つまり著しい比例関係の存在ということが,H26舛添/H24猪瀬 の得票比が0.48だとか(上記),H23石原/H24猪瀬の得票比が 0.60 である等の原因である.

 比例関係がある,ということを,どう理解すれば良いのだろう?
 得票数が多い時は比例関係が目立つようになるのだろうか.
 その場合,投票者数よりも有権者数との比例関係がより顕著であるらしいのは何故か.
 選挙ごとに投票者数が変動し,当選者の獲得票数も大きく変動している.にもかかわらず各区での獲得票数が有権者数ときっかり比例する,という現象は,どういう仕組みによって起こったのだろうか.

 都知事選のデータを,もう少し調べて行きたいと思う.


追記.
 上記のうち2は正しくないかもしれない.2つの相関係数,「当選者の得票数 対 有権者数」と,「当選者の得票数 対 投票者数」を比べてみた(下の表).相関係数が1に近いほど,点は一直線に乗っているはずだ,H11の石原氏の得票数も,投票者数よりは有権者数と,より相関している.より投票者数と相関していたのはH15とH23であった.いずれにせよ大きな違いではないが,H26の舛添氏の得票だけが,投票者数ではなく有権者数とはっきり関係しているように見える.
“相関係数まとめ.xls”のプレビュー.jpg

都知事選,散らばりの小ささ

 最近の国政選挙では,開票結果が本当に正しいのだろうか,ひょっとして数字が操作されているのでないか,といった可能性が,いろいろ指摘されている.孫崎亨氏が指摘しているのは東京都知事選挙の結果で,平成26年の選挙で当選した舛添要一氏の得票数が,平成24年に当選した猪瀬直樹氏の得票数の0.48倍になるという事実だ.東京23区のどこでも0.48倍で,このような均一性が自然に起こるとは考えづらいという.
https://www.youtube.com/results?search_query=%E5%AD%AB%E5%B4%8E+%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E9%81%B8%E6%8C%99

 また,平成23年の石原慎太郎氏の得票が,平成24年の猪瀬氏の0.6倍になる,という「不自然さ」を指摘する人もいる.選挙結果の数値は東京都選挙管理委員会のホームページに掲載されているので,これらの指摘がどれほど当たっているかを,まず確かめようと思う.そして,もし指摘通りであるならば,そういう事がなぜ起こったのかを調べることが,次の作業になる.

1.散らばりの大きさ
 以下は東京23区に限って話を進める.まずH26舛添/H24猪瀬 の比を23区それぞれについて計算する.この23個の数字について平均と分散を求める.蛇足ながら,分散(variance)とは「散らばりの大きさ」を示す数字である.H26舛添/H24猪瀬の場合,平均(平均値ともいう)は0.486,分散は0.00026となった.

 で,この数字は小さいのだろうか.「通常なら,この程度の値になる」という情報が必要だ.過去の都知事選に何度か立候補している人について,2回の選挙の得票数の比を調べてみる.たとえば宇都宮健児氏,ドクター中松氏,マック赤坂氏などである.ただし得票数があまりに少ない候補は,誤差が大きくなると考えられるので,考慮しないことにする.

 もう1つ気付いたことがある.それは,比率の数値が大きくなるにつれ,分散の値もまた大きくなることだ.この効果をできるだけ減らすために,平均値が0.48に近い例だけを調べる.必要なら分母と分子を逆にする.たとえば H24猪瀬/H23石原は平均値が1.6程度であるが,分母と分子を逆にすれば 0.6程度になる.

2.分散比
 分散が求まれば,比較したい2つの分散の比,つまり分散比を計算すれば良い.数値の小さいほうを分母にする,という注意が必要だ.分散比はF-分布に従う. 何とアバウトな! と叱られそうだけど,厳密な「統計的検定」でなく1つの目安ぐらいに考えてFの確率を調べる.

 一般に,統計的検定では,「有意水準」というものがある.多くの場合,確率が5%より小さければ,その事象は「メッタに起こらない」と判定される.もっと厳しく,確率1%を基準にとることもある.この5%とか1%とかを「有意水準」という.

 今回のデータではn= 23個の数字の平均と分散であるから,自由度 n-1 は22.そういう分散の比をとったのだから,分散比F の自由度は分子分母ともに22である.F がどういう値より大きければ2つの分散が「等しくない」と判定されるかというと,5%水準ならF = 2.04 程度である.1%水準なら F = 2.78 程度.
 なお,エクセルの関数では次のように入力すれば確かめられる.
= FDIST ( 2.04, 22, 22)
または
= FDIST ( 2.76, 22, 22)
 それぞれ0.05または 0.01 程度の数値が表示されるはずです.

3.計算した結果は
 次の表では H26舛添/H24猪瀬 を分母に置いて,分散比を計算している.3〜6の中松氏や赤坂氏の分散に比べ,舛添/猪瀬 や石原/猪瀬の分散はゼロが1つ多い.そして実際 舛添/猪瀬の分散を分母にして分散比を求めると,2.78よりずっと大きな数値になる.対して,石原/猪瀬 は,舛添/猪瀬 と有意差がない.

“分散比 打出用.xls”のプレビュー.jpg

 表に書かれてない宇都宮氏についてはどうだろうか.H26宇都宮/H24宇都宮 は平均値 1.047,分散0.00721である.これと比較できる平均値のものとして H19石原/H23石原 がある.後者の平均値は1.058,分散は0.00173 である.よって分散比Fは,
F = 4.17
程度の値となる.これは1%水準の2.78より大きい.

 以上,まことにアバウトな計算で,ツッコミどころ満載の計算であるが,いちおうの結論は:
 舛添/猪瀬 だけでなく,石原/猪瀬も,石原/石原も,いずれも地区ごとの変動が著しく小さい.
ということだ.議論の出発点,つまり「1.散らばりの大きさ」に書いた問題設定の,これが答だ.

 じつは,舛添,猪瀬,石原の3氏については,地区ごとの得票数は,それぞれの地区の有権者数とみごとに比例している.元データをダウンロードして,自分で確かめてみてください.

4.エピローグ
 「これが答だ」と書いてしまったけれど,「とりあえずの」答というべきかもしれない.本当はもっと研ぎすませねばならないのだけれど,ここでは大まかな道筋のみを書きました.

 相関係数による分析をしている人もいる.
http://ameblo.jp/ghostripon/entry-11798680218.html
それも1つの方法である.今回は別の方法を紹介した.とにかく日本中で,もっと多くの人に,都知事選のデータを検討してほしい.話題にして欲しい.舛添氏の得票は不自然なのか,不正があったのか,等は,その先の問題だ.

不正選挙

 48%である.平成26年の東京都知事選挙で舛添要一氏が獲得した票数は,平成24年の都知事選で猪瀬直樹氏が獲得した票数の48%である.都全体の総得票数の話ではない.東京23区の,どの区においても,H26舛添/H24猪瀬 の得票数の比率は48%に極めて近い数字になる.23区以外の市や町については,もっと散らばりが大きくなるらしい.しかし,これほど均一な結果が,はたして偶然に得られるものだろうか,と孫崎亨氏は言っている.YouTubeで4本全部聴いたら30分ほどかかるけれど,聴く価値のある内容です.
https://www.youtube.com/results?search_query=%E5%AD%AB%E5%B4%8E+%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E9%81%B8%E6%8C%99

 選挙の開票結果が操作されている?
 最近の日本,特に3.11以後の日本では,巨大な力をもった人や組織が平然と嘘をつく.「権威」あるいは「信頼」といったものが消失している.これほど嘘が蔓延している現状を見れば,選挙を管理する人々や機械が嘘をつかないとは,とても断定できない.国民ができるのは投票まで.以後の票の扱いはブラックボックスである.中を覗くこともできないし,「第3者によるチェック」などもない.開票結果の正しさを保証するものは存在しない.

 当局が発表する開票結果は,間接民主主義の基礎である.事実をそのまま伝えてもらわねば,社会制度そのものが偽物になってしまう.タテマエは民主主義だが内実は独裁政治,というような社会になる可能性もある.

    *    *    *

 開票とは,票を仕分けして数えるという基本操作だ.獲得票数は,いわばモノサシで読み取る「長さ」や,温度計が示す「温度」のようなものだ.しかし,そういう基本データですら,当局の発表を鵜呑みにできないのが昨今の日本だ.データの一部を隠蔽したり改変するのも当り前というご時世である.

 モノサシや温度計それ自体が,正しくない数値を示す場合もあるだろう.実際,開票結果が明らかに間違い,という事例もある.
http://ameblo.jp/gnkx29/entry-11572999713.html

(以下転載)
2013/08/29 NHK21時のニュース
 七月に行われた参議院選挙の開票結果で、香川県高松市の投票所では 比例代表選出の参議院議員の衛藤晟一氏の得票率が0票だった。
 全国で20万票獲得した衛藤氏の得票数が「0」というのは考えられず 高松市の自民党支持団体も「衛藤氏に投票した」と証言。
衛藤議員は「0票はありえない」と憤ってる。
(転載おわり)

 この一件では,選挙管理委員会は,衛藤氏は当選したんだから良いではないか.開票をやり直しても結果が変る訳じゃないし,やり直し開票には労力や経費がかかりすぎるので,再検討はしない,という趣旨のことを言って,それで一件落着.

 開票をやり直さない理由はコストや労力という,およそ信じられないことがまかり通っている.選挙という重要なイベントが,これほど軽視されて良い訳がない.

 間接民主主義は,開票結果からすべてが始まる.基本中の基本である.衛藤氏の事例は,その基本が信用できないことを示している.事は深刻である.間違いの原因は何だったのかを徹底解明する作業が必要である.また長期的には,選挙の開票結果が正しいかどうかを判定できるように,開票の仕組みを見直す必要がある.

    *    *    *

 都知事選の結果に話をもどす.舛添氏の得票数は猪瀬氏の48%である.どの地区でもそうで,こういう一致は偶然には起こりえないだろう.これほど重大な問題についても,マスコミは沈黙している.

 もちろん,今やすっかり平壌放送の日本版に成り下がったNHKなどに期待してはいけない.さいわい各候補の地区別得票数は,東京都選挙管理委員会のホームページに出ている.まず孫崎氏の指摘を検証するところから始めればよい.そして,なぜそういう結果になったのかを,もっと全国的に大規模に議論し合う必要がある.

 国民投票法なるものが今国会で成立する見通しだという.そしてファシスト安倍晋三は,悲願であった憲法改正を実現しようと目論んでいる.その重大なステップである投票と開票の仕組みが,上記のような惨状である.事の重大さを国民は広く認識せねばならない.

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