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言論統制がやって来る

 - 安らかにお眠りください.失敗はくり返しませぬから.
 広島の平和公園にある,あまりに有名な言葉だ.原爆で亡くなった人たちへの,生き残った者たちの約束である.人々は皆この約束を,もうすっかり忘れ去ったのだろうか.失敗は誰にでもある.しかし失敗から学ぶことをしないのは馬鹿である.日本国民は過去の大失敗から学ぶことなく,再び同じ道をたどろうとしている.

 そう.秘密保護法だ.今週は,まず「みんな」が,次いで「維新」が合意した.おおかたの予想通りの行動だ.そして安倍首相が「今週中には〜」と言っていたように,予想通りのタイミングだ.あまりに見え透いた「出来レース」.こんなものを何か重大事件のように報道するマスコミって,何なんだろう.

 嘘(うそ)ばかりがまかり通る国.嘘で塗り固められた国.それが今の日本だ.
シバエビ じゃなくて バナメイエビ
ニュース じゃなくて 政府広報
最高裁判所 じゃなくて 最低の裁判所
日本を取りもどす じゃなくて 取りこわす,売り渡す.
愛国 じゃなくて 売国
日本の首相 じゃなくて 米国の忠犬
 数えあげればキリがない.

 さて,
 秘密保護法が施行された場合,予想される最大の危険は,「言論の自由が著しく制限される」ことだ.警察,特に思想犯を扱う特高警察が猛威をふるうようになる.戦前の再来である.人々は口をつぐみ,日本はあの愚かな戦争に向けて突進して行った.

 もうすぐ,愚かな議員たちが喜々として,この暗黒法案に「賛成」票を投じる.そして秘密保護法が成立する.そうなれば,もう日本人は政治について語ることはできない.これを阻止できるのは世論しかない.この国のことを大切に思うのなら,いま声を上げて反対するしかない.

 テレビは相変わらずお笑いとグルメの話ばかり.人々は洗脳され飼い慣らされて,事の重大さに気付かない.そうしているうちに日本は近隣の某国なみの,ひょっとしてそれ以上の,言論統制国家へと変貌する.

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 「週刊プレイボーイ」47号が,秘密保護法案に「不自然な『穴』」があることを指摘している.特定秘密を漏らした人や,漏らすよう促した人が厳罰に処せられるのに対し,外国人による特定秘密の取得に関しては,罰則規定が一切ないのだ.これは,うっかり抜かってしまったのではなく,故意に作られた穴である,と同誌は断定している.

 つまり秘密保護法は,外国人のスパイ等ではなく,日本国民を取り締まるための法律だということ.たとえば米国政府による盗聴は,秘密保護法の対象外.

 一般に,軍隊の銃口は敵国に向けられるけれど,しばしば自国民にも向けられる.いま日本の警察は自衛隊と合同の訓練などを通じて,軍事部門にも活動を拡げようとしている.この自衛隊&警察の 「銃口が誰に向けられているか」 について,日本国民はもっと敏感になる必要がある.

      *        *       *

 秘密保護法はまた,特定秘密を扱う国家公務員や警察職員,関連する民間会社や大学,研究機関などの職員について,その「適性」を評価する制度を定めている.犯罪歴,薬物濫用歴,精神疾患歴,飲酒癖,借金,所属団体,思想傾向,宗教,etc. 本人だけでなく親族一同(配偶者,親子兄弟姉妹,配偶者の親や兄弟姉妹)がそのように調査される.個々人のプライバシーの領域まで,公権力がずかずかと入り込んで来る.秘密保護法はそういう「思想信条の自由を脅かす」行為に法的根拠を与え,正当化する.

 もう一度書いておこう.
 秘密保護法は日本国民を監視し取り締まるための法律である.
 国民の「言論の自由」は著しく制限される.
 「思想信条の自由」も脅かされる.

出来レース

 日展の審査が「出来レース」だったとマスコミが大騒ぎしている.確かに,まことにケシカラヌことではある.しかし特に目新しいこととも思えない.芸術に限らず,さまざまな分野で,人事とかカネの配分などに派閥や人脈が大きな影響を与えることは,日本では常識と言ってよい.

 もっと重要な「出来レース」を,政治の世界で日常的に見ることができる.昨日だか一昨日だったか,TPPの交渉で米国などから「すべて非関税に」と要求されたとか,日本は苦しい立場に追い込まれた,などと報道されている.今頃になって気付いたとでも言うのだろうか? 本当にそうなら日本のマスコミ人の眼はフシアナどころではない.

 そもそもTPPへの参加は菅直人が言い出したことだから,議論ははるか以前にさかのぼる.すべて非関税とされてしまう可能性(というより必然性)は,当初より各方面から指摘があった.野党時代の自民党はそういう正論を堂々と主張していた.そして選挙で大勝した.

 ところが安倍晋三はTPPへの参加を表明.これにマスコミが同調し,「聖域」だとか「守るべきは守る」とか,できる訳もないことを喧伝し始めた.乗り遅れてはいけない.尻込みしていてはいけない.とにかく飛び込んでチャレンジしなくてはいけないなど,無茶苦茶な議論が横行した.

 全部ウソ.すべて当時から判っていたことです.今頃になって交渉が難航だとか言っているのは,「いや,頑張ったんですけどね,ダメでした」という発表を近いうちにせねばならないので,その予防線を張っているんです.政府と御用マスコミが仕込んだ「出来レース」だ.最初から判っていたことを,今になって判ったかのようにニュースを「偽装」しているのだ.バナメイエビをシバエビと偽るより余程タチの悪い偽装である.

- 今さらに 偽装で騒ぐ 国でなし
(ブログ連歌 http://pub.ne.jp/shimura/?cat_id=65693 より)

 話がズレてしまった.
 出来レースといえば公明党.秘密保護法を安倍晋三が持ち出したとき,国民の「知る権利」や取材の自由などを条文に明記せよと主張.それに沿って条文は修正されたようだけど,さて何が改善されたのやら.問題点を指摘する振りをして,いずれにせよ最後は賛成する.誰もが予想した通りの出来レースだった.

 今また同じ道を民主党がたどろうとしている.マスコミの報道も焦点はもっぱら法案の「修正」だ.法案そのものを廃棄せよという意見は,まるで問題外というような扱いになっている.そうハッキリ報道する訳ではないが,そのような印象を与える報道をしている.「日本人はイメージで考える」と,かつて加藤周一(でしたか?)が嘆いた.マスコミによるイメージづくりと,日本人のイメージ思考が,あの戦争に日本を誘導して行った.その歴史を踏まえての苦言であった.今の日本国民は,この言葉を噛み締めてみる必要があるだろう.

 盛んに報道されている秘密保護法の修正案.これは同法を国会通過させるための,あまりに明白な「出来レース」である.秘密保護法は廃案にするしかない.それ以外の選択をしてはいけない,と私は思います.

秘密保護法と軍機保護法

 戦前が復活している.安倍晋三の祖父は岸信介.かつて日米開戦を決めた東條英機内閣の閣僚だった.町村信孝の父は,特高警察のボスだったそうです.
 そういう人たちが,かつて日本を戦争に導いたのと同じ仕組みを作ろうとしている.それが「秘密保護法」.日本の安全保障のため必要だという.理由(口実)までそっくり.

 日本が坂道を転がり落ちるように戦争へと向かった.その時とあまりに似ている.いま日本国民に必要なのは,まず過去の歴史,日本転落の歴史を学ぶことではないでしょうか.

 戦前の「軍機保護法」について,今回はkimekime25さん,
http://blog.goo.ne.jp/kimera25/e/ca1ede8bed62d13c37ab7793d537362c
から勝手に抜粋転載します. 当時の国会でのやり取りを,今回の安倍さんや町村さんの発言と比べてください.

(以下転載)
資料 2013/11/08-2 秘密保護、戦前の警鐘 弾圧受け犠牲、遺族ら訴え

 かつて日本に軍機保護法という法律があった。軍事秘密を守る目的だったが、太平洋戦争の突入前に大幅改正。当時の政権は「危険な運用はしない」と明言し ていたものの、秘密の範囲は拡大し、言論統制につながった。「同じ危うさをはらんでいる」。軍機保護法を知る人たちは、7日に国会審議が始まった特定秘密保護法案に警鐘を鳴らす。
(中略)

 ■「危険な運用せぬ」 軍機保護法、当時の答弁

 特定秘密保護法案は軍機保護法と共通点が少なくない。日本弁護士連合会の秘密保全法制対策本部で事務局次長を務める太田健義(たけよし)弁護士に よると、特定秘密保護法事件をめぐる逮捕状や起訴状、判決文では具体的な秘密内容は明らかにされない。弁護人も秘密の開示対象にならないという。

 軍機保護法が大幅に改正された当時の帝国議会の速記録には、軍や政府側の答弁が残されている。
 議員「これもあれも秘密となると、非常に危険なことがありはしないか」
 陸軍担当者「決して国民に目をふさぎ、耳をおおえというような、昔の代官時代の立法でない」

 国政調査への悪影響を懸念する指摘もあった。
 議員「予算を審議するにおいて何個師団増して、人件費がどのくらいということは当然調べなければならぬ。尋ねれば監獄にぶち込まれるとなれば憲法政治の根底的の破壊である」
 司法省「危険な運用はいたしおらぬつもり」

 だが、立法趣旨からかけ離れて運用された。
(以下略)


 いまの国会でのやり取りと,あまりに似ている.質問者の懸念も同じ.政府の答弁も同じ.
 上記のやり取りの後,軍機保護法は改正され,その後日本はあの戦争に突入して行く.そういう歴史を知っている現代のわれわれから見れば,当時の政府は大ウソをついていた.

 今の安倍政権はどうだろう.原発事故の放射能は完全にコントロールされている,と明言するような首相であるが,秘密保護法については真実を語っているのだ,と考えるのは合理的だろうか?

もっと論議を

 特定秘密保護法(案)の問題点として,
1.何が秘密で,何が秘密でないか,が明記されてない.
2.秘密を漏らした人だけでなく,漏らすように共謀,教唆,扇動をした人も有罪となる.
3.その行為が完遂されず,「未遂」に終わった場合も,有罪となる.
などが挙げられる.

 また懲役10年とは大きな罪であり,こういう重罪の場合,逮捕状がなくても,また警察官でなくても,逮捕できる.
 そういう法律(案)である.

 どこかで聞いた話の受け売りになるけれど,次のような可能性を指摘する人もいる.

1.
 ある日,旦那が職場から不機嫌な顔をして帰宅した.そこで夫婦の間でこういう会話が交わされた.
妻「何があったの?」
夫「それは言えない」
妻「じゃ,どうしてそんな不機嫌な顔してるの?」
夫「言えない」
妻「何言ってるの.きちんと話してくれなきゃダメじゃないの」

 というわけで,このとき夫が「言えない」内容が,「特定秘密」に該当する事項を含んでいたとしたら,妻の行為は秘密を漏らすように「教唆」したことになる.


2.
 ある原発の門前で,核燃料の持ち込み,持ち出しに反対する集会をやっている.そこに荷物を満載しているらしいトラックがやって来た.
市民「核燃料の搬入には反対だ」
原発所員「いや,これは核燃料ではない」
市民「では何なのだ.何が積載されているのだ?」
他の市民「そうだ,そうだ! 中身は何なのだ?」

 もし積載されているものが「特定秘密」に関わるものなら,この市民の発言は,秘密の漏洩を「教唆」「扇動」したことになるかもしれない.そのようにして,この市民を懲役刑に処することが可能かもしれない.


 どちらも極端な例のように聞こえるかもしれないけれど,条文を見る限りは,これらの可能性を完全否定できない.かつて日本では,社会が暴走を始めて,とんでもない愚かな思考論理が横行した.そういう経験を忘れてはならない.

 こういう疑問を政権の中枢にいる政治家にぶつけたら,「そんな事ありませんよ」と笑い飛ばすだろう.そういう悪意のある法案ではありません,と笑顔で答えるかもしれない.しかし,政治家は真実を語らないことを,もう日本人は学ばねばならない.嘘でないとしてもそれは,その政治家がその役職に留まっている期間に限られる.その程度の「賞味期限」の発言が,特に最近は多い.

 文頭に秘密保護法案の問題点を3つ書いたけれど,やはり最大の問題は1の,何が秘密で何がそうでないかを市民が知るすべがないこと,かもしれない.何か悪いことをしているという自覚もないまま,うっかり地雷を踏んでしまうことも起こりうる.一介の市民が,ある日とつぜん逮捕されることも,大いにあり得る.

 特定秘密保護法案の問題点が,もっと活発に,もっと多くの人々の間で,論議されねばならない.

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