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毒まんじゅう作戦

 最近の学者は信用できないことを,私はブログ「高知に自然史博物館を」で何度となく取り上げた.科学者がウソをつく背景に国立大学の法人化があることも指摘した.
http://plaza.rakuten.co.jp/tosana/diary/201110150000/
 また,科学者の研究活動が事務系職員のシロウト判断で簡単に左右される現状が,朝日新聞の連載記事「プロメテウスの罠」で描かれているので,その第3部にあたる「観測中止令」の記事を,同じブログで紹介している.

 信用できないのは学者だけではない.日本国民に与えられる情報が,いかに歪められたものになっているかを,ことに3.11以後の「放射能は安全」キャンペーンや,最近のTPPをめぐる議論の中で見ることができる.このような情報しか与えられない国民は必ず道を見誤ると思う.
 このことと大いに関係しそうな記事を「植草一秀の『知られざる真実』」というブログで発見した.本ブログの主題からハズれるけれど,重要なことだと思うので,ここに紹介する.
 記事のタイトルは「日本破壊のTPPと国民生活破壊のTPR」というもの.つい先日(12月10日)の記事である.
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-c5e0.html

 なお,ここでTPRとはtax のPR という意味.新しい税(売上税)の導入を国民に納得させるために大蔵省(当時)が1985年(当時は中曽根内閣)から始めたPR作戦のことだそうです.

(以下転載)
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 TPRの活動は大きく分けて三つあった。
 
  第一は、政界・財界・学界3000人リストを作成し、この全員を説得するというもの。リストアップされた3000人の全員に対して大蔵省幹部が説得に出向いた。了解を取り付けた人物にはリスト上に丸印が付される。説得工作が失敗した場合にはX印が記され、ひとつ階級の高い官僚が次の説得に向かう。売上税導入に反対する人物には、最終的には事務次官までが対応するとの態勢が敷かれた。
 
 財金研研究部では毎日3000人リストの更新作業が行われた。3000人に対する徹底した説得工作が実行された。
 
  第二は、メディアに登場する論評に対する検閲である。TPRウィークリーなる資料が作成された。あらゆる新聞、テレビ、週刊誌、月刊誌、単行本における税制問題関連の記述が検閲の対象になり、賛成派と反対派を色分けし、反対派をブラックリストに入れて説得工作の重点対象とするとともに、賛成派を売上税推進の提灯持ちとして活用することが検討された。
 
 第三は、メディア関連企業に対する説得・接待活動である。新聞、テレビ、広告代理店、さらに大手出版社までが説得・接待活動の対象にされた。接待としては、吉兆などの高級料亭が用いられたこともある。
 
 マスメディアのなかで、とりわけ重要度が高いのがNHKである。政府・与党が大きな政策を推進しようとする際、政府・与党はNHKを活用する。NHKは政府・与党の政策推進に積極的に協力してNHKスペシャルを制作する。

(中略)
 
 政策構想フォーラムでの売上税の影響試算を担当したのは大阪大学の本間正明教授だった。大蔵省のTPR担当責任者は、本間氏を大蔵省の主任研究官に招聘することを決定した。反対派の学者を大蔵省が取り込んでゆく戦術が採用されたわけだ。
 
 大蔵省内部ではこれを「毒まんじゅう作戦」と呼んだ。
 
「御用学者」に堕してしまう学者は、政府審議会の委員に就任することに大きな価値を置いている亜流の人物たちである。大蔵省は財政制度等審議会、資金運用審議会、政府税制調査会など、いくつもの政府委員会を保有していた。
 
 反対派の学者を懐柔する際に、こうした政府委員会委員ポストなどを毒まんじゅうとして活用するのである。
 
 大蔵省の主任研究官ポストなども重要な毒まんじゅうのひとつだ。
 
 なかには、骨のある懐柔に屈服しない学者も存在するが、大蔵省は学者を懐柔できず、学者が硬派であると判断すれば、そのような学者を遠ざけて近づけないようにする。同時に、最重要危険人物リストに掲載する。
 
 逆に懐柔に成功した人物には、次々に毒まんじゅうを与えて、政府の手先として徹底して活用することになる。毒まんじゅう作戦はてきめんに効果を発揮していった。
 
 売上税反対派の学者が、すべての側面で財務省の振り付け通りに動いてゆくようになるのである。

* * * * *

 政府の各種委員会があるが、このすべてにおいて、結論は所管の省庁によってあらかじめ決定されている。その決定に権威付け、あるいは箔付けをするために委員会が利用される。
 
 したがって、委員会の座長には、必ず、政府のコントロールに従う人物が起用される。学識・見識が・知識が重視されることはない。議論を丸くまとめ、かつ、政府の意向を結論に誘導する誘導力を持つ人物が選ばれる。
 
 委員会には反対意見を述べる委員も加えられる。しかし、この反対派の委員に、骨のある、しかも専門知識も深い、本物の反対派は決して起用されない。起用されるのは、簡単に論破されてしまう弱小の反対派だけである。
 
  こうして御用学者の系列が生み出される。財務省の御用学者になると大きな恩典がある。予算措置において財務省が便宜を供与するのだ。各大学にとって、予算 編成上の便宜は何よりも重要な事項だ。だから、財務省の委員会委員になるとその学者の学内での発言力が高まり、学者としての実績はなくても学内での地位を あげることも可能になる。
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(転載おわり)

 この記事に書かれていることの真偽のほどは知らない.しかし最近の日本の状況を考えてみると,思い当たるふしが多々ある.あの人も,この人も,ひょっとして毒まんじゅうを食べたのかな,と思えてくる.いつの間にか日本は,とんでもない三流国になってしまったのかもしれない.
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コメント 5

shira

 だから行政や経済は教育に介入したくてしょうがないんでしょうね。
by shira (2011-12-13 22:02) 

Ladybird

 shira様,nice!とコメントありがとうございます.

 日本の公教育はシステム全体に大きな問題があると思います.政治家や財界はそれを上意下達の徹底,管理の強化によって解決できると思っています.または,そう主張しています.

 実際には管理の強化によって文科省の仕事がふえて発言力が強まるので,文科省のお役人は大喜びでしょう.病根が文科省にあるのに,それを退治しないで,むしろ助長することになります.感染症に対し抗生物質でなく免疫抑制剤を処方するようなものです.

 というふうに考えると,政治家や財界が病気の診断を誤っている原因は,そういう判断に陥りやすい世論風潮があり,そのさらに原因はマスコミ等にあり,そのさらに原因は,そうですね,ご指摘の通り病根様そのものにあるのかもしれません.
by Ladybird (2011-12-14 03:06) 

ayu15

学者も研究費確保に「努力」してるんでしょうね。理想の研究と売れる研究のギャップもあるように思えます。

政治不信・官僚不信と言っているある人が監視強化厳罰化で自分たちを取り締まり監視する権限あたえようと言ってるのは不可解です。

上意下達の徹底は怖いです。

夢のエネルギーのはずの原発が悪魔のエネルギーになったのは上意下達の徹底や毒まんじゅうも要因と反省は・・・・

なさそうですね・・。
by ayu15 (2011-12-15 13:44) 

Ladybird

> 理想の研究と売れる研究のギャップ

 いつの時代もそれはありますが,どちらを取るかは科学者個人の選択の問題でした.しかし最近は,科学者を追い込んで1つの逃げ道(毒まんじゅう)にすがり付かせるという手法が活用されているように思います.

> 政治不信・官僚不信と言っているある人が監視強化厳罰化で自分たちを取り締まり監視する権限あたえようと言ってる

 政治家だか官僚がじょうずに論理をすり換えているのにコロリとだまされてしまう人が多いのでないでしょうか.

> 夢のエネルギーのはずの原発が悪魔のエネルギーになったのは上意下達の徹底や毒まんじゅうも要因と反省は

 上意下達の徹底や毒まんじゅう作戦は大成功しているので,もちろん反省はないと思います.
by Ladybird (2011-12-17 01:48) 

Ladybird

くろねこ様,アルバイシン様,ayu様.トラバありがとうございます.
by Ladybird (2011-12-17 01:49) 

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